アンジオテンシンII(AngII)受容体サブタイプの網膜神経節細胞のアポトーシスに対する役割を明らかにするため実験を開始した。本年度はまず、野生型マウスを用いて網膜視神経節細胞障害モデルを作成し、その結果の再現性について、試薬、実験手技などの側面から検討した。今回行った網膜神経節細胞障害モデルの作製方法はKumadaらが2004年に報告したもので、硝子体腔内にNMDA(N-methyl-D-aspartic acid)を注入することによって網膜神経節細胞のアポトーシスを惹起させるものである。我々は、12週齢の雄性野生型マウス(C57BL/6J)の右眼に10mMに調整したNMDA溶液を32ゲージ針付きマイクロシリンジを用いて3μl注入し、左眼はコントロールとした。その後、1日後、7日後に両眼球を摘出し、ホルマリン固定後にパラフィン包埋し組織学的検討を行った。組織学的検討としては、網膜視神経乳頭と網膜鋸状縁の中間部250μmの部分の網膜組織の網膜神経節細胞数、および内網状層厚を測定した。その結果、NMDA注入後7日目において、網膜神経節細胞数は平均13±2.9個、コントロール平均22.8±2.5個、内網伏層厚は平均26.3±6.5μm、コントロール平均42.5±6.5μmと、いずれもコントロールに比しNMDA注入眼で有意な減少を認めた。次に、NMDA注入1日後の標本のTUNNEL染色を行い、網膜細胞のアポトーシスを検討した。そ結果、NMDAでは網膜経節細胞層と内顆粒層に明らかなTUNNEL陽性細胞の増加を認めたのに比し、コントロール眼にはまったく確認されなかった。今年度の結果より、今回我々の実験で用いる動物モデルが網膜神経節細包のアポトーシスを再現性高く惹起させ得ることが明らかとなり、来年度以降、本モデルを実際にAngII受容体ノックアウトマウスを用いた実験に用いることの妥当性が確認された。
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