目的 : 糖尿病網膜症の原因としてポリオール代謝異常があり、アルドース還元酵素阻害薬は糖尿病網膜症の治療薬として期待されている。今回我々は近年開発されたアルドース還元酵素阻害薬Fidarestatを用いて、糖尿病ラットにおける白血球-血管内皮相互作用に対する抑制効果を検討した。 方法 : 実験動物はLong-Evansラットを用い、糖尿病ラットはストレプトゾトシン(STZ)75mg/kgを腹腔内に投与して作成した。Fidarestatは固形飼料中に含有させ自由摂取とした。STZ投与日より4mg/kg/day、16mg/kg/dayで摂取させたものをそれぞれ4mg群、16mg群とし、固形飼料(薬剤非含有)のみを摂取させたものを糖尿病群、未処置のものをコントロール群とした。網膜中のソルビトール・フルクトース濃度はLC/MS/MSを用いて測定した。網膜内白血球集積はアクリジンオレンジデジタルフルオログラフィーを用いて検討した。 結果 : 糖尿病群ではソルビトール・フルクトース濃度は有意に上昇していたが、4mg群、16mg群いずれも糖尿病群と比較して有意に減少した。網膜内白血球集積数は4mg群で6.1±3.5/mm^2、16mg群で5.2±3.2/mm^2といずれも糖尿病群(9.8±3.9/mm2)に比較して有意に抑制された(p<0.0001)。 結論 : Fidarestatは糖尿病ラット網膜の白血球集積を抑制した。Fidarestatは糖尿病網膜症における白血球-血管内皮の粘着能亢進を改善することが示唆された。
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