脈絡膜新生血管の発症機序は一般的な血管新生と同様に炎症や創傷治癒機転が関与しているとの報告が散見される。炎症やそれに続く血管新生はサイトカインのネットワークにより複雑に制御されている。インターロイキン10(IL-10)は抗炎症性サイトカインで、近年では抗血管新生因子・抗腫瘍作用を有すると報告されている。我々はマウスを用いて、実験的脈絡膜新生血管(CNV)を作成し、IL-10を硝子体内に投与することにより、CNVが抑制されるか検討した。雄のC57BL/6Jマウスにレーザ光凝固術を行い、CNVを作成した。その後、IL-10を硝子体内に投与し、1週間後に眼球摘出し、FITCで染色してフラットマウントを作成、CNVの面積を測定し対照と比較検討した。また経時的に眼球摘出し、網膜色素上皮-脈絡膜を分離してELISA法によりIL-10、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を測定し、マクロファージの集積をフローサイトメトリーで対照とIL-10投与群とで比較検討した。CNVの面積は、対照と比較しIL-10投与群(51.7±5.3%、P<0.001)で有意に減少した。同様にIL-10投与群は、VEGFの発現(56.5±12.5%、P<0.001)、マクロファージの集積(48.4±7.8%、P<0.001)で有意に減少したが、光凝固術後いずれの時期においても、IL-10の発現は非光凝固群と有意差は認められなかった。IL-10を硝子体内に投与することにより有意にCNVの発症を抑制することができた。機序としては、マクロファージの遊走能と活動性を抑制することによるものと考察した。
|