本研究の目的は加齢性眼疾患における酸化ストレス状態を明らかにし、それに関連する遺伝子多型を検索し、同疾患の病態を解明することである。 平成19年度は、加齢性眼疾患の中でも視力の予後が悪く今後我が国で患者数が増加すると予想される加齢黄斑変性(AMD)における酸化ストレス状態について検索を行った。対象はAMD患者44例で、眼底疾患を有さない健常人55例をコントロールとした。検索項目は酸化ストレスマーカー(CoQ10酸化率、血清LPO)、抗酸化能、各種水溶性・脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、)、金属(鉄、銅)とした。その結果、AMD患者ではCoQ10酸化率、血清LPOが有意に上昇し、全身的に酸化ストレスを受けている状態であることが推測された。その一方で・総抗酸化能、葉酸、β-クリプトキサンチン、ビタミンA、還元型CoQ10であるユビキノールの有意な低下がみられた。これらから、AMD病態に酸化ストレスが関与することが強く裏づけられた。今回の検索は予備的で、限られたバイオマーカーの大まかなスクリーニングのみを行ったにすぎないが、AMD発症における酸化ストレスの関与を裏付ける結果と考えられる。またCOQ10酸化率およびLPOがAMDの新しいバイオマーカーになりうる可能性、抗酸化物質の摂取や投与によりAMD発症を抑制できる可能性が示唆された。 今後、さらに酸化ストレスマーカーの検索をすすめるとともに、酸化ストレスに関する分子群の遺伝子多型についての検索を行う予定である。
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