研究概要 |
組織特異的糖尿病合併症の発症にレニン・アンジオテンシン系が関与していることは近年報告され始めているが、網膜症に関しては新生血管や網膜浮腫が生じる際の病態解析が主であり、実際に視機能を担っている網膜神経細胞に着目した報告は少ない。そこでわれわれはストレプトソトシン(STZ)誘導糖尿病モデルマウスにアンジオテンシンII1型受容体(AT1R)阻害剤(AT1R blocker, ARB)を投与することで以下の点を新規に解明した。 STZ誘導尿病膜症モデルにおいて、アンジオテンシンIIおよびAT1Rのタンパク発現量は神経網膜内で増加していた。 生後6週の成本C57/B6マウスにSTZ 60mg/kgを3日間腹腔内投与することで誘導する糖尿病モデルマウスを作成し、STZ投与4週間後の網膜におけるアンジオテンシンIIおよびAT1Rのタンパク発現量をイムノブロット法にて確認したところ増加していることが分かった。 STZ誘導尿病膜症モデルにおいて、シナプス機能タンパクのひとつであるシナプトフィシンのタンパク発現が低下していた。 STZ誘導糖尿病網膜においてシナプトフィシンの発現量をイムノブロット法およびリアルタイムPCRにて確認したところタンパクレベルでは減少しているが、mRNAレベルでは変化がないことが分かった。 アンジオテンシンII1型受容体抑制により糖尿病網膜における神経機能障害が抑制された。 上記の結果からARBをSTZ誘導糖尿病モデルマスに投与したところシナプトフィシンパクの発現低下を抑制されることが分かった。さらに糖尿病マウスの網膜電図では律動様小波の振幅減弱および潜時延長を示すが、これらがARBの投与により抑制されることが分かった。
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