マウス全層角膜移植モデルを神経再生の評価系として確立した。マウス角膜移植モデルにおいて、GFP陽性の神経線維とkeratocyte様の樹枝状細胞が移植片内に進入する様子が観察され、移植片内に出現したkeratocyte様の樹枝状細胞の多くは神経線維に伴っており、三叉神経が実質幹細胞のnicheに関与しているという仮説が具体性を持ったように思われた。最終的に術後9週までの観察を行ったが、この段階で移植片中央部まで神経線維は進展し、やはり神経線維に沿って樹枝状細胞が認められた。しかし生理的な神経線維の走行やkeratocyteの分布に比べ、未だ粗で単純であるため、この後さらに長期間経過を観察する必要があると思われた。続いて、神経再生を促進させ得ると考えられるSema3A阻害薬を用いた予備実験を行った。全層角膜移植を行ったマウスに対し、Sema3A阻害薬を定期的に結膜下注射で投与することにより、術後3週という早期に神経断端からの活発な神経再生を観察する事ができた。またコントロールと統計的に比較するため再生神経の程度を定量化する必要があるが、フラットマウントしたグラフト内の神経線維を蛍光顕微鏡で撮影し、撮影した写真で神経線維の蛍光をトレースすることによって、再生神経の総延長を数値化する方法を確立した。さらに、再生神経の機能を評価する方法として、角膜知覚を測定した。臨床で用いられる角膜知覚計によって、マウスにおいても知覚測定が可能であることを確認した。
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