研究概要 |
ヒトぶどう膜炎において鞭な役割を果たすT細胞上に発現するProgrammed death 1(PD-1)は抗原提示細胞上のB7H1とB7DC分子の受容体として免疫抑制系に働く。またOB7H1とB7DCは抗原提示細胞のみならず組織にも発現し末梢免疫寛容に関与していることが報告されている。今回、我々は網膜色素上皮細胞(マウス、ヒト)におけるB7H1とB7DCの発現を解析し、更に網膜色素上皮細胞由来のcellline(ARPE-19)を用いて網膜色素上皮細胞におけるB7H1とB7DCの役割についても検討した。ARPE-19とヒトおよびマウス網膜色素上皮細胞のB7-H1、B7-DCの発現をIFN-γ添加後48時間培養したものと比較しRT-PCRおよびflow cytometryにて発現を解析した。また、無刺激あるいはIFN-γ添加ARPE-19と末梢血CD3+T細胞を共培養し、サイトカイン(MCP-1、IL-8、IFN-γ)を測定した。その結果、無刺激の健常網膜色素上皮細胞およびARPE-19では、RT-PCRおよびflow cytometoryにてB7-H1、B7-DCの恒常的な発現が見られ,IFN-γ刺激により発現増強を示した。マウスの網膜色素上皮細胞においてはIFN-γ刺激時のみB7H1の発現が認められた。ARPE-19と共培養した末梢血CD3+T細胞とのサイトカイン産生(MCP-1,IL-8、IFN-γ)は、抗B7H1抗体添加により顕著に促進された。ヒト網膜色素上皮細胞は、B7HlおよびB7DCを発現し、特にB7H1はT細胞の活性化に拘制的に働いていた。これらの結果から、網膜色素上皮細胞は眼内の炎症局所において免疫調節作用を有することが示唆された。またマウス実験的自己免疫性ぶどう膜炎の動物モデルにおいてPD-1ノックアウトマウスを用いてPD-1/PDL経路の役割を解析した。PD-1ノックアウトマウスでは臨床的および病理学的にコントロール群と比較して有意にぶどう膜炎は重症化していた。また抗原刺激によるリンパ球増殖反応ならびにIFN-γ、IL-2産出がPD-1ノックアウトマウスで促進されていた。PD-1/PDLの系が抑制的に働いている可能性が示され、Th1反応の増強をきたしぶどう膜炎の病態が増悪すると考えられた。現在さらなるメカニズムについて解析中である。
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