自己免疫疾患において重要な役割を果たすT細胞上に発現するProgrammed deathl(PD-1)は抗原提示細胞上のB7H1とB7DC分子の受容体として免疫抑制系に働く。また、B7HlとB7DCは抗原提示細胞のみならず組織にも発現し末梢免疫寛容に関与していることが示唆されている。今回、我々は網膜色素上皮細胞と角膜内皮細胞におけるB7H1とB7DCの発現と役割について検討した。その結果、ヒト網膜色素上皮細胞は、B7-H1、B7-DCの恒常的な発現が見られ、IFN-γ刺激により発現増強を示した。網膜色素上皮細胞と共培養したT細胞とのMCP-1、IL-8、IFN-γ産生は、抗B7H1抗体添加により顕著に促進された。また、ヒト角膜内皮細胞においても同様の傾向がみられた。これらの結果から、網膜色素上皮細胞と角膜内皮細胞は眼内の炎症局所において免疫抑制作用を有することが示唆された。さらに眼局所だけでなく、マウス実験的自己免疫性ぶどう膜炎の動物モデルにおいてPD-1ノックアウトマウス(KO)を用いてPD-1/PDL経路の役割を解析した。PD-1KOでは臨床的および病理学的にコントロール群と比較して有意にぶどう膜炎は重症化した。抗原刺激によるリンパ球増殖反応ならびにIFN-γ、IL-2、IL-17産出がPD-1KOで促進された。さらに劇症化のメカニズムについて各種阻害抗体を用い解析したところ、抗PD-1抗体投与群と抗B7DC抗体投与群で有意にぶどう膜炎は劇症化した。このことから、PD-1/B7DCの系が抑制的に働いている可能性が示され、Th1とTh17反応の増強をきたしぶどう膜炎の病態が増悪すると考えた。
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