本年度の研究実施計画に基づき、NaIO_3(ヨーソ酸ソーダ)をSDラットに投与し網膜変性モデルを作成した。さらにGFP(green fluorescence protein)遺伝子導入ラットの大腿骨・脛骨から摘出した骨髄細胞の初代培養を行い、骨髄間質細胞のみを選択的に収集した。このGFP発現骨髄間質細胞を網膜変性モデルラットに移植(静脈内投与)し、経時的に眼組織を摘出した。移植ラットの網膜においては、NaIO_3投与による網膜変性(網膜色素上皮細胞層の変性、外顆粒細胞層の配列の乱れなど網膜外層を中心とした障害)が組織学的に確認されるとともに、網膜外層を中心とした部位特異的なGFP陽性骨髄間質細胞の分布が確認された。これらのGFP陽性移植細胞は、他の角膜・強膜・ぶどう膜組織等への分布は無く、網膜障害部位特異的な因子により、誘導され定着したものと考えられたが、それら移植細胞の網膜構成細胞への分化は免疫組織化学的手法あるいは電子顕微鏡を用いた超微形態学的観察においては確認されなかった。 さらに正常眼組織における骨髄由来細胞の分布を調べるために、放射線照射した野生型マウスにGFP遺伝子導入マウスから採取した骨髄間質細胞を移植した骨髄移植モデルを作成した。本モデル動物においては、角膜・強膜・ぶどう膜・網膜・視神経の各々の眼組織において、それぞれ部位特異的な形態学的特徴と分布パターンを持ちつつ骨髄由来細胞が存在している様子が観察された。さらに、それらの細胞の多くはマクロファージあるいはミクログリアである事が共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡による詳細な形態学的解析にて明らかになった。
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