横隔膜ヘルニア(以下本症)は先天性に横隔膜の一部が欠損している疾患であるが、直接縫合できない欠損の補填には人工膜が使用されている。通常本症に対する手術は新生児期に施行され、人工膜を使用した場合患者の胸郭の形成に影響を及ぼす。この解決には既存の人工物では不可能である。既知の生体材料を使用することも非現実的であり、再生医学を用いて組織再生をはかり欠損部を補填する方法が必要であるが、その開発が本研究の目的である。本研究で扱う横隔膜は骨格筋であるが、国内での研究はなされておらず本邦初である。 本研究では人工的に横隔膜を欠損させたラットモデルを用い、PLGA-collagen hybrid meshを縫着してその再生を図る。PLGA-collagen hybrid meshは、加工しやすい反面細胞接着作用に乏しい生体内吸収性担体であるpoly-DL-lactic-co-glycotic-acid(PLGA)に胞接着・増殖促進作用をもつ天然高分子コラーゲンスポンジをハイブリッドさせたシート状担体である。 平成19年度においては、ラット横隔膜ヘルニアモデルへのシート縫着技術の確立と組織学的検討をおこなった。PLGAのみのシートとの比較とともに、間葉系幹細胞の有無での再生横隔膜の差異を明らかにするために、間葉系幹細胞を採取しPLGA-collagen hybrid meshへの播種の有無を比較した。 ラットは横隔膜の欠損で容易に死亡してしまうため、挿管し人工吸気下で手技を行わなければならず困難を極めたがこれを確立することが出来た。 現在までのところPLGA-collagen hybrid meshはPLGA meshに比して厚い膠原線維膜に置換することから素材の有用性が明らかとなってきている。間葉系幹細胞の有無での差異ははっきりとはしておらず、免疫染色での検討を行う予定である。
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