研究概要 |
当該年度に経験した胆道閉鎖症(BA)3例・先天性胆道拡張症3例の肝・胆道組織を用い、初代培養を試みた。線維芽細胞のシートにマイトマイシン処理を行なったfeeder layer上に、破砕した組織片をまき、implant後1/3/5日に培養液を交換、細胞の立ち上がりを観察した。結果、培養開始後5日で胆嚢組織砕片から上皮細胞様の細胞群が生着した。現在、この細胞群にアデノウイルスを感染させてE6/7遺伝子を導入し、不死化を試みている。培養環境を微調整しながら、至適条件を検討している。一方、胆管を結紮したBalb/C mouseを使って、肝・胆嚢・胆管から初代培養を試み、3〜4種類の細胞群の培養に成功した。上皮細胞様の形態を示すものが含まれており、上記と同様な方法で不死化を試みている。次年度はコロニーassayとFACS scanにて細胞群を単離することを目指し、これらのcharacterizationを行なう。 上記実験と並行し、BA発症への自然免疫の関与を検討中である。昨年度は臨床検体(肝組織)を用い、自然免疫のkey receptorであるToll-like receptor (TLR2,3,4,7,8,9)とその下流に位置する炎症性サイトカイン(TNFαなど)・interferon induced protein (MxA)の遺伝子発現を、real time PCRを用い検討した。BA群でTLR7/8およびTNFαの発現が有意に高く、発症に自然免疫が関わること、triggerとして一本鎖RNAが何らかの役割を担っていること、が示唆された。次年度は、樹立した不死化細胞株のうち、免疫担当細胞である樹状細胞と胆管上皮細胞を用い、研究を進める。TLR7/8のリガンドで細胞を刺激し、そのresponse(下流遺伝子群の発現)を、control群と比較する。
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