本研究では、リンパ管系良性・悪性腫瘍の病変部における脈管新生因子群の発現をRT-PCR法および免疫組織学的手技で解析すると同時に、リンパ管系腫瘍患者の血清中の脈管新生因子群の発現をELISA法で測定することにより、リンパ管系腫瘍の発病と進展に関与する血管新生因子を明らかにする。 【対象と方法】 リンパ管腫7例、リンパ管肉腫3例を対象とし、真皮血管組織を正常コントロールとした。 (1)RNAの抽出:パラフィン切片または凍結切片からマイクロダイセクションにより病変組織と隣接する正常組織を分離し、AGPC法によりRNAを描出し、cDNAを作成した。 (2)RT-PCR法:病変組織における脈管新生因子(TIE2、Angiopoietinl、Angiopoietin2、VEGF)のmRNAレベルにおける発現を定量化した。 (3)免疫組織化学的検討:免疫組織化学染色により脈管新生因子(TIE2、Angiopoietinl、Angiopoietin2、VEGF)の蛋白レベルでの発現様式の検討を行なった。 【結果】 正常組織と比較してリンパ管腫瘍ではAngiopoietin2の発現量が高かった。リンパ管腫及びリンパ管肉腫の比較では、リンパ管肉腫においてVEGFの発現量が高く、また免疫組織学的検討では、リンパ管系腫瘍においてAngiopoietin2の発現の増強が認められた。 【考察】 リンパ管系腫瘍においては、Angiopoietin2が腫瘍形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。またリンパ管系腫瘍の悪性化においてVEGFが関与している可能性が示唆された。
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