外傷、悪性腫瘍切除後などに生じた鞍鼻変形に対して、しばしば自家肋軟骨を用いた隆鼻術が行われるが、術後移植肋軟骨が彎曲変形をきたす症例が散見された。もし、移植肋軟骨の彎曲の原因、およびそのメカニズムが解明されれば、逆説的に彎曲変形をきたさないようにするための予防策についてのヒントが分かるのではないかと考えた。 ソムノペンチルによる静脈麻酔および2%キシロカイン局所麻酔を適宜併用し、家兎(日本白色家兎)の第9肋軟骨を採取し、鼻背部皮下に移植した。1か月後、3か月後、6か月後、1年後に、移植肋軟骨を取り出し、おのおのの群で彎曲変形の程度にどういう差が生じるか、左右の肋軟骨で彎曲変形の違いはあるか等、肉眼的、組織学的(光学顕微鏡・電子顕微鏡)に観察しようと考えた。 19年度においては、まず、本研究に使用する家兎モデルの作成を目的とした。軟骨膜を有する群と、軟骨膜を除去処理した群とに分けて移植したところ、変形の度合いが異なる事が分かった。軟骨膜を有する群では移植肋軟骨長が大きくなる事が分かった。また、移植床側の条件を一定にそろえることに関してどう担保するか、家兎の第9肋軟骨は実寸ではかなり小さく、変形の度合いをどう数値化するかなど、あらたな課題が生じた。 今後は、引き続き実験モデルの作成を行うと同時に、彎曲変形の程度を客観的に計測する方法、また、取り出した移植肋軟骨の組織を採取し、HE染色切片の光学顕微鏡による観察、および脱灰標本の組織学的考察も行う。
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