外傷、悪性腫瘍切除後などに生じた鞍鼻変形に対して、自家肋軟骨を用いた隆鼻術が行われる。肋軟骨は自家組織であるがゆえに、人工物使用に比べて移植後の合併症も少なく、広く利用されている。しかしながら、術後移植肋軟骨が彎曲変形をきたす症例が散見され、追加手術などを必要とすることがある。移植肋軟骨の彎曲の原因、およびそのメカニズムが解明されれば、逆説的に彎曲変形をきたさないようにするための予防策についてのヒントが分かるのではないかと考えた。家兎の肋軟骨を採取し、鼻背部皮下に移植するという家兎の実験モデルを作成した。ある一定期間経過した後、移植肋軟骨を取り出し、どう変化したかを肉眼的、組織学的(光学顕微鏡・電子顕微鏡)に観察し考察した。肋軟骨膜を有する群と有さない群の2群に分け、おのおのの群で彎曲変形の程度にどういう差が生じるかを比較検討した。形態的な変化について、3ヶ月後のグループで肉眼的に若干の変化を認めたが、個体差によるばらつきがあり、統計的処理だけでは正しいデータが反映できないことがわかった。取り出した移植肋軟骨の組織を採取し、HE染色切片の光学顕微鏡による観察、および脱灰標本の組織学的考察を行ったところ、短期埋入群では、肋軟骨膜の有無にかかわらず軟骨細胞が生きていることがわかった。また、軟骨細胞の配列は、弯曲の程度によらず一定で、肉眼的弯曲の変化と、組織学的細胞配列の変化は必ずしも一致しないことが判明した。 本研究で得られた結果をふまえて、外鼻再建に関して、臨床症例を交えて学会発表を行った。
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