研究概要 |
ヒトkeratinocyteのCell LineであるHaCaT Cellに対し、アディポサイトカインの一種であるAdiponectinの添加実験を行い、細胞増殖・分化、さらにApoptosisへの影響を観察した。その結果、Adiponectinは、HaCaT CellのBrdUの取り込みを用量依存的に阻害しており、増殖を抑制していた。またReal Time PCRにてHaCaT CellのmRNA量を計測したところ、keratinocyteの分化マーカーであるinvolucrinの発現が用量依存的に抑制されることがわかった。さらに、TGF β1, 2, 3のmRNAも用量依存的に変化しており、TGF β1がadiponectinの添加によって発現が増加するのに対し、TGF β2, 3は発現が低下していた。 Apoptosisへの影響としてTUNEL assayを行い、adiponectinが用量依存的にKeratinocyteのApoptosisを促進していることがわかった。 糖尿病では足底の潰瘍において上皮化が進まない一方、周辺に分厚い胼胝を生じたり、逆に胼胝が原因となって足底潰瘍を生じることがある。これらはkeratinocyteの異常増殖・分化やApoptosisの過程が正常に行われないことから生じると考えられる。一方、糖尿病ではAdiponectinの血中濃度が低下することは以前より知られている。本研究により、糖尿病における低Adiponectin血症が、足底の胼胝を惹起させたり、潰瘍の上皮化を妨げている可能性が示唆された。これは糖尿病における潰瘍に対して、軟膏などによるAdiponectin局所投与といった新たな治療法の可能性を示すものである。
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