本研究の目的は全合成型の電気化学活性酸素種センサーが生体内で活用できることを確認し、活性酸素種が影響している病態において活性酸素種の動態を把握することにより、活性酸素種による生体傷害の病態を解明することである。 本年度は電気化学活性酸素種センサーを用いた生体内持続ラジカル測定法を確立するにあたり、(1)ラット血液内でのin vitro測定、(2)ラット前脳虚血再潅流モデル、(3)ラットエンドトキシン血症モデルにより検証を行なった。 (1)採血したラット血液内でキサンチンーキサンチンオキダーゼ反応によりスーパーオキシド(O_2^-・)を発生させ、血液内で本測定法によりO_2^-・を捉えることが可能であった。(2)ラット前脳虚血再潅流モデルにおいて、虚血中および再潅流後に頚静脈内で持続的にO_2^-・を捉えることができた。(3)ラットエンドトキシン血症モデルでは混合静脈血中において持続的にO_2^-・を捉えることができた。以上の結果から、本測定法により生体内で持続的、直接的にO_2^-・を捉えることが可能であった。また、O_2^-・電流値および、電流値を積分して得られる電荷量が生体内のO_2^-・の評価に適しているという結果を得た。 生体内での持続ラジカル測定法は世界初であり、今後ラジカルが関与する病態の解明に非常に有用であると考えられる。また、O_2^-・を持続的にモニターしながら治療を行うことにより、O_2^-・値を治療の指標することができる可能性がある。従って、来年度はこのO_2^-・値を治療の指標として、O_2^-・抑制作用の期待できる薬剤を用いてO_2^-・産生機序の解明を行う。 このO_2^-・電極を用いた生体内持続ラジカル測定法は簡便で侵襲も少なく、bedsideでの測定に適している。現在、臨床応用に向けて開発を進めている。
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