本研究の目的は全合成型の電気化学スーパーオキシド(O_2^-・)センサーが生体内で活用できることを確認し、O_2^-・を含む活性酸素種が影響している病態において活性酸素種の動態を把握することにより、活性酸素種による生体傷害の病態を解明することである。 本年度は昨年度確立したラット前脳虚血再潅流モデルを用いて、(1)薬剤(アロプリノール、ウリナスタチン、フィゾスチグミン)、(2)軽度低体温(32.0℃)、(3)高濃度酸素吸入、(4)高血糖のO_2^-・ラジカル産生に与える効果を検討した。(1)O_2^-・消去薬(アロプリノール、ウリナスタチン、フィゾスチグミン)、(2)軽度低体温(32.0℃)、(3)高濃度酸素吸入は虚血再潅流後のO_2^-・産生を抑制するとともに酸化ストレスおよび早期の炎症を抑制した。(4)高血糖は虚血再潅流後のO_2^-・産生を増悪させるとともに酸化ストレスおよび早期の炎症を増悪させた。 また、ラットエンドトキシン血症モデルにおいて、ウリナスタチンのO_2^-・ラジカル産生に与える効果を検討したところ、ウリナスタチンはO_2^-・産生を抑制するとともに酸化ストレスおよび早期の炎症、血管内皮障害を抑制した。 前脳虚血再潅流およびエンドトキシン血症において、O_2^-・値は酸化ストレスおよび炎症マーカーと有意な相関があり、O_2^-・は炎症および組織障害の指標となり、経時的にモニターすることにより治療の指標となることが示唆された。 本年度の研究により、脳虚血再潅流およびエンドトキシン血症の病態におけるO_2^-・の関与を解明し、炎症・組織障害の指標および治療の指標としてそのモニタリングの重要性が示唆された。このO_2^-・電極を用いた生体内持続ラジカル測定法は簡便で侵襲も少なく、bedsideでの測定に適している。現在、臨床応用に向けて開発を進めている。
|