昨年度までの研究により確立した一過性脳虚血モデルを用いて、虚血後の再還流に引き続き、経動脈的に骨髄単核球の細胞移植を行った。これにより、血管新生が促進されることを統計学的に示した。臨床において、脳梗塞超急性期に血栓溶解療法を行い脳血管の再開通を試みているが、今回の結果から、血栓溶解療法に引き続きに細胞移植を追加することによって、血管新生が促進する可能性が示唆された。 また新たに生じた血管が移植によって補われた細胞から形成されているのか、移植によって内在性の細胞が活性化され血管形成に関与するのかを、Green Fluorescent Protem(GFP)を発現するトランスジェニックマウス(CAG-GFPマウス)を用いて検討した。虚血・再還流用のマウス(レシピエント)と移植細胞を採取するマウス(ドナー)とにおいて、CAG-GFPマウスと野生型マウスとを組み合わせ、新生された血管内皮細胞がドナー由来ではなく、レシピエント由来の細胞から形成されていることを発見し、論文発表を行った。また、移植した細胞は短期の時点ですでに経動脈的に脳内に移植されているにもかかわらず、すでに脳内にとどまっていないことが判明し、虚血状態における移植細胞が何らかの液性因子の活性化に関与している可能性が示唆された。また機能障害に関する改善には、移植群と非移植群とで有意差を認めなかった。今後、細胞移植の投与量、経路(経静脈投与と経動脈投与の違い)や時期(再還流から投与までの時間)に関して、また神経再生につながるさらなる研究が必要と考えられた。
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