研究概要 |
非貪食細胞内に侵入したA群レンサ球菌(GAS)は.オートファゴソームに取り囲まれ,リソソームと融合して分解される.細胞内で病原微生物の表面構造物(PAMPs)を認識する因子として,Nod1, Nod2をはじめとしたNLRファミリー遺伝子が知られているが,我々は昨年度総会時に一部のNLRの発現を抑制するとGAS感染時のオートファゴソーム形成率が低下することを報告した.本研究ではこれらのNLRによるオートファジー誘導への関与をさらに詳細に解析し,細菌感染時に誘導される炎症応答との関連についても検討した.オートファゴソームのマーカーであるLC3を可視化したプラスミドをHeLa細胞に導入し,GAS菌株JRS4を感染させてオートファゴソーム形成を観察した.次にNLRファミリーに含まれるNalp4, Nalp10の全長及びこれらのPYD, NACHT, LRR領域のいずれかを欠失させたタンパクの発現プラスミドを導入し,オートファジー誘導と細胞内に侵入した菌の動態について解析した.また,NF-κBの転写活性をルシフェラーゼァッセイにより測定した.Nalp4, Nalp10を強発現した細胞ではGAS感染により約70%の細胞でオートファジーが誘導され,PYD, LRRの各領域を欠失させたプラスミドでも同様の傾向が見られた.しかし,いずれかの遺伝子のNACHT領域を欠失させたプラスミドではオートファゴソーム形成率が約35%に減少し,NF-κB活性はGAS感染によって特に著しい上昇を示した.この結果は,Nalp4, Nalp10がNACHTドメインを介して協調することにより、炎症誘導を抑制し、オートファジーの誘導に関わることを示唆している.
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