研究概要 |
in vitroの実験から、Notch細胞内ドメイン(Notch intracellular domain, NICD)はβcateninに結合し、Wnt/βcateninシグナルを抑制することにより骨芽細胞分化を抑制することが判明した。そこでin vivoにおけるNotchシグナルの骨芽細胞分化に対する作用を調べるために、2.3kbpマウスType I collagenプロモーターの制御下で骨芽細胞特異的にNICDを発現するトランスジェニック(TG)マウスを作製した。TGマウスは野生型マウスと比較して、低身長、低体重であった。軟X線像や組織像およびpQCTによる骨形態計測から、TGマウスでは海綿骨と皮質骨の骨形成の低下が認められた。頭蓋骨や長管骨での骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現をreal-time PCRにより調べると、ALP, Osteopontin, Osteocalcinの発現が低下していた。さらに興味深いことにWnt/βcateninシグナルの標的遺伝子であるAxin2やTCF7の発現低下も認められた。またin situ hybridization法による解析の結果、TGマウス長管骨ではType I collagen, Osteopontinの発現は認められたが、Osteocalcinの発現は認められなかった。以上の結果から、in vivoにおいてもNotchシグナルはWnt/βcateninシグナルを抑制することにより骨芽細胞分化を抑制する作用を持つことが示唆された。今後NICDとβcateninの相互作用について、TGマウス骨組織からタンパクを抽出し免疫沈降を行う予定である。これまでにNICDとβcateninが直接相互作用する事を証明した報告はなく、本研究は骨形成だけでなく様々な器官発生におけるNotchシグナルによる新たなWnt/βcateninシグナルの調節機構を提供すると考える。
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