研究概要 |
平成19年度は切歯の幹細胞の増殖・維持に働く成長因子を検討する為に、マウス切歯の形成端部で発現する成長因子の網羅的解析実験を行った。さらにin vitroにおける歯の上皮系幹細胞と間葉系幹細胞の共培養条件を検討する為に、培養液の最適化条件とコラーゲンを使用した場合の培地と歯の幹細胞の適合性について検討を行った。 1.Super Array社のRT2Profiler PCR Array Sytemの製品の中からMouse Growth factors(PAMM-041C)を使用して解析を行ったところ、これまで報告されているFgf,Bmpシグナルの他、歯での解析が行われていない数種類の分子が侯補として挙げられた。特に発現が高かったFgf9について組織化学的実験を行ったところ、切歯歯胚形成端部の上皮組織に局所的に分布することが見いだされた。さらにFgf9タンパクを加えて培養を行った歯胚ではFgf10の発現が維持されたことから、Fgf9はFgf10とともに幹細胞nicheを構成する分子であることが示唆された。この結果は現在論文にまとめ受理されている。また、近年骨髄などの造血組織において特定のケモカインが幹細胞nicheを構成する為の重要なファクターであることが、CXCL12のトランスジェニックマウスを使用した実験により示されている。同様のケモカインがPCRアレイの結果から歯でも表現しており、重要な機能を持ちうることが考えられたため現在これらの分子についても詳細を検索している。 2.コラーゲンを数種類の異なった濃度で培地に加え、間葉細胞をコラーゲンの中で培養し、上皮細胞と間葉細胞の分布,細胞数の変化について数日培養を行い検討した。現在最適なコラーゲンの濃度と細胞の播種法について引き続き検討中である。
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