研究概要 |
デキサメサゾン(Dex)の骨芽細胞分化に対する作用機構を明らかにする目的で、未分化間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化誘導することが知られているサイトカイン(BMP-2)との併用による相乗効果について検討した。実験方法として、まず、マウス由来の未分化幹細胞様培養細胞であるC3H10T1/2細胞を,BMP-2(+)Dex(-),BMP-2(-)Dex(+),BMP-2(+)Dex(+),およびBMP-2(-)Dex(-)の条件でそれぞれ培養した。その後、骨芽細胞分化の指標であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性をそれぞれの培養系において測定した。実験の結果,BMP-2とDexを同時に作用させた培養系では,それぞれを単独で作用させた培養系と比較して,顕著にALPのmRNAの発現量が増加し,活性レベルが上昇した。次に,ルシフェラーゼアッセイを用いてALP遺伝子の上流に存在するプロモーター領域の解析を行った。ALPプロモーター領域の各種欠損配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に結合させたコンストラクトを作成し,これを細胞に導入した。その後、それぞれの細胞にBMP-2およびDexを作用させ、ルシフェラーゼの活性レベルを解析した。解析の結果、BMP-2とDexのALP遺伝子発現誘導に対する相乗的な効果には,転写因子STAT3の結合配列が必要であることが示唆された。そこで、STAT3に対する抗体を用いて、クロマチン免疫沈降を行ったところ、ALPプロモーター領域に存在するSTAT3結合配列を含むゲノム断片が共沈することが確認できた。さらに、siRNAを用いてSTAT3の発現を抑制した細胞では,BMP-2とDexのALP遺伝子発現誘導に対する相乗的な効果が抑制された。これらのことから,DexはSTAT3を介してBMP-2と相乗的に働き、C3H10T1/2細胞の骨芽細胞への分化を誘導する可能性が示唆された。
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