研究概要 |
目的 : 健常な歯根膜における上皮細胞の機能の解明が本研究の目的である。 方法 : 本研究に使用した動物は、Wistar系ラット(6週齢, 平均体重約150g, 14頭)である。麻酔薬により十分に鎮静させ、開胸後、左心室から化学固定液により灌流固定を行った. 頚部で切断し、切り離した頭部を同固定液にて6時間さらに固定を行った。その後、Caキレート剤含有水溶液により脱灰を行った。歯を含む顎骨が柔らかくなったことを確認したのちに、専用の包埋剤にて浸透させ、液体窒素により凍結させた。そして薄切器を用い、歯頚部から根尖部にかけて厚さ約6-8μmの連続組織切片を作製した。そして、組織切片上の歯根膜上皮細胞と免疫担当細胞の局在を顕微鏡下で可視化させるために、CK抗体とED1, OX6抗体を用いて免疫二重組織化学染色を施し、光学顕微鏡と電子顕微鏡にて観察を行った。 結果 : 歯根膜において、CK抗体に免疫陽性を示した上皮細胞は、様々な形状の細胞集塊を呈し、主として歯頸部や根分岐部のセメント質表面近くに分布していた。また、脈管の周囲、歯根象牙質とセメント質の間、歯槽骨の近傍や骨の中にも分布していた。ED1免疫陽性の細胞は、主に歯根膜中央付近から歯槽骨側にかけて認められ、上皮細胞との接触はほとんど認められなかった。一方、OX6免疫陽性の細胞は、歯根膜内に広く分布し、CK免疫陽性の歯根膜上皮細胞にもしばしば接触していた。電子顕微鏡による観察では、OX6免疫陽性細胞は、細胞集塊を取り囲むだけでなく、集塊中へ細胞質突起を伸長していた。その接触部位では、上皮細胞とOX6免疫陽性細胞が、互いに噛み合うような像がしばしば観察された。 考察 : 本研究の結果より、ラットの歯根膜皮細胞は、(特にOX6免疫陽性の)免疫担当細胞と密接な関係にあることが明らかとなった。上皮細胞は、免疫担当細胞との相互作用を通じ、健常な歯根膜の恒常性の維持等に関与する可能性が考えられた。
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