ATP-binding cassette(ABC)トランスポーターの視点から破骨細胞系譜の生命現象を解明するために、破骨細胞におけるABCトランスポーターの発現解析を行った。ヒト骨髄細胞及びマウス骨髄細胞を用い、それぞれの細胞からヒト破骨細胞とマウス破骨細胞を調製した。これらの細胞からtotal RNAを単離し、cDNAを調製した。破骨細胞の調製と平行して、ABCトランスポーターの発現解析用PCRプライマーを設計した。48種類のヒトABCトランスポーターを対象として発現解析を行った結果、31種類のABCトランスポーターの発現がヒト破骨細胞に認められた。また、ヒト破骨細胞、ヒト骨髄細胞、ヒトCD34陽性細胞、ヒト白血球、ヒトCD71陽性細胞におけるABCトランスポーターの発現量を比較することにより、8種類のABCトランスポーターの発現が破骨細胞への分化と伴に上昇することが示唆された。また、2種類のABCトランスポーターの発現が破骨細胞への分化に伴い低下することが示唆された。これらの結果は、マウス破骨細胞を用いた解析においても同様に認められた。 一方、破骨細胞に発現が認められたABCG2を対象として、細胞内分布の変化に関する解析を行った。その結果、アミノ酸変異を伴う一塩基多型バリアントABCG2(F208S)とABCG2(S441N)に関して形質膜への移行率が低いことが見出された。形質膜への移行率が低いことの原因を追究した結果、これらの一塩基多型バリアントがユビキチンープロテアソーム分解系において速やかに分解を受けていることを明らかにした。これは、ABCG2の細胞内存在量が遺伝子によって規定されていることを示す新たな知見である。平成19年度は、コーディング領域の塩基配列がABCトランスポーターの時空間分布を制御する因子の一つであることを明らかにした。
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