研究概要 |
ほとんどすべての生物は体内に概日リズム(サーカディアンリズム)を有しており、様々な生理現象に厳密な制御をもたらしている。これまで疼痛制御に対するサーカディアンリズムの関与について、詳細はほとんど明らかとなっていない。一方で、疼痛伝達制御において最も重要な細胞群が密集している脊髄内においてもサーカディアンリズムの存在が報告されている。そこで本研究では、脊髄レベルにおける疼痛伝達制御に対するサーカディアンリズムの関与を明らかにすることで、異常疼痛(痛覚過敏及びアロディニア)発症メカニズムをより明確にし、効果的かつ、副作用の少ない治療法の確立を目指すことを目的とするものである。本研究では、疼痛伝達に重要な役割を有している脊髄および培養脊髄アストロサイトを用いて以下の点を明らかにした。(1)マウス脊髄における各種時計遺伝子(Per1, Per2, Bmall)の変動に概日リズムが存在していた。(2)初代培養脊髄アストロサイト及びアストロサイト細胞株C6細胞において、ノルアドレナリンがアドレナリン受容体を介して時計遺伝子Per1 mRNA発現を誘導していることを確認した。(3)C6細胞におけるノルアドレナリンによるPer1 mRNA発現誘導作用にはcAMP-protein kinase A-CREB系とtyrosine kinase-GSK-3β系を介した2つの経路により制御されていることを確認した。本研究結果は、脊髄及び脊髄アストロサイトにおいてPer1遺伝子を介したサーカディアンリズムが存在し、さらにこれらはノルアドレナリンにより発現制御を受けている可能性を示唆するものである。
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