研究課題
本研究では、味細胞の各種味刺激に対する応答性や味覚抑制物質の効果などを詳細に追及し、味覚情報が味細胞レベルでどのように分別されているのかを明らかにする。また、応答記録細胞の発現遺伝子解析や細胞型が容易に特定できる遺伝子改変マウスを利用し、各応答特性に関与する味覚受容の分子機構や、応答特性と細胞型との関連を明らかにする。これらから、味のニューラルコーディングチャネルにおける味細胞の役割(味覚情報の収集と伝達、およびそのメカニズム)を究明することを目的とする。本年度は当初平成20年度の計画とした細胞型と応答特性との関連について追及した。味蕾内の細胞はI〜III型および基底細胞に分類される。このうちII型細胞は甘味、うま味、苦味の受容体を持つがシナプスを持たず、III型細胞はシナプスを持つがこれらの受容体を持たないと考えられている。これらの細胞が実際に味刺激に応答し、情報を神経に伝えているのかを調べるため、IIおよびIII型細胞のマーカーとされるGustducinおよびGAD67を発現する細胞にGFPを発現させた遺伝子改変マウスを用い、II型、III型細胞の応答特性を解析した。その結果、Gustducin発現細胞(II型細胞) は甘味、うま味、苦味刺激に応答し、それら応答細胞では受容体(TIRs)、細胞内清報伝達分子(TRPM5, PLCβ2)の発現が見られた。GAD67発現細胞(III型細胞) の多くは酸味刺激に応答し、一部はNaC1などの電解質にも応答した。GAD67を発現し酸味応答を示す細胞では酸味受容体候補遺伝子(PKD2L1) の発現が見られた。これらの結果から、II型、III型細胞は共に味刺激に応答し、それぞれ異なる味質(II型:甘味、うま味または苦味、III型:酸味または電解質)を検出する役割を持つ可能性が示唆された。
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