研究概要 |
本研究の目的は「唾液分泌機構における新規分子 PRIP の役割を解明すること」である。すなわち我々の研究室で見出し、中枢神経系における役割が明らかになってきた PRIP 分子の中枢神経組織以外における生理的役割を唾液腺の分泌反応をモデルとして解明しようとするものである。唾液分泌促進に至る既知の情報伝達経路である細胞内 Ca2+ 反応、タンパク質リン酸化反応の PRIP による修飾の分子機構を調べる。初年度の平成19年度はPRIP1,2ダブルノックアウトマウスを用いて以下の実験を行った。(1) 個体レベルでの実験: ピロカルピン刺激による唾液分泌量を測定したところ、ノックアウトマウスの方が野生型と比較して僅かに唾液分泌量が多い傾向にあったが、統計的有意差を認めるには至らなかった。但し、個体レベルでは刺激強度の細かな調節が困難であることが原因で PRIP による繊細な分泌調節への関与が見いだせなかった可能性が大きい。(2) マウスより唾液腺細胞を単離し、外来遺伝子の導入法の検討を行った。リポフェクション、エレクトロポレーション法では検討したいずれの条件でも1割の導入効率に届かず、組み換えウイルスの導入が必要となった。一方この初代培養細胞を用いて刺激に伴うタンパク質リン酸化をウェスタンブロット法によって検出する系を確立した。この系の確立により、唾液分泌機構に関与するタンパク質リン酸化経路及び細胞内 Ca2+ 反応について、個体レベルでは明らかとならなかったような繊細で高度な唾液分泌の調節機構における PRIP の関わりが明らかになると期待される。
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