研究概要 |
近年,咀嚼が海馬賦活を高めるという報告があり,認知症の予防法として注目されている。先行研究から日常生活に簡単に取り入れることのできるガムチューイングが認知記憶に関連する大脳辺縁系(海馬)・頭頂連合野・前頭前野を賦活化させることが示されてきたが,実際の記憶獲得・想起過程においてこれらの部位が脳内でどのように連絡しあって記憶を蓄積・想起させているか,またガムチューイングがそれらの経路においてどのように影響しているかについてはいまだ不明である。本研究は,fMRIに加え,新しいMRI応用手法である拡散スペクトラムイメージング(DSI)とMEGを用いたヒト脳マルチモダリティ計測によって,短期記憶獲得・想起時における「記憶回路」の解明,そしてこれらにおけるガムチューイングの効果を定量的に評価することを目的とした。 (1)記憶課題デザインの作成:短期記憶課題であるSternbergタスクをfMRIやMEGでの刺激提示用に作成した。課題遂行に伴う脳活動をfMRI, MEGにより測定し,課題の難易度に応じて脳活動の強度が増加することを確認した。 (2)fMRI・DSI・MEGによる記憶回路モデル推定:本年度は研究実施計画の「(1)fMRIで推定された複数脳賦活部位間の形態的な神経連絡のDSIによる確認」について重点的に研究をおこなった。fMRIにおいて記憶課題遂行時の脳活動部位を抽出し,DSI解析における線維走行描出のseed pointとして入力するソフトウェアを開発し,任意の脳部位間の線維連絡の解析が可能となった。本成果はHuman Brain Mapping 2008学会で発表する予定である(JS Yu et al., Tracking the cerebro-cerebellar verbal WM circuitry using fMRI and DSI.)
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