研究概要 |
細胞周期が停止した破骨細胞前駆細胞(pOCP)は、寿命は数週間以上であるため、破骨細胞ニッチを形成すると考えられる。活性型ビタミンD_3(1, 25D_3)などの骨吸収因子の刺激を受けると、ただちにpOCPは破骨細胞へ分化することを既に我々は見出していた。本研究は、破骨細胞ニッチの存在場所を明らかにすることを目的としている。平成20年度は、当初の計画通りpOCPの存在部位(すなわち破骨細胞ニッチ)を同定するため、RANK_+でかつ細胞分裂をしないもしくは遅い細胞だけをGFP標識できるトランスジェニック(Tg)マウスを開発するため、DNAコンストラクトを作製した。 また最近、破骨細胞分化に必須である分子M-CSF受容体の新しいリガンドIL-34が発見された(Science 320:811, 2008)。そこで当初の計画と併行して、破骨細胞ニッチへのIL-34の関与について検証した。1, 25D_3は、in vivoにおいてM-CSF非依存的に破骨細胞形成を促進することを本研究者は既に見出していた。本研究により、1, 25D_3はRANKLの発現上昇をもたらすが、この破骨細胞誘導はRANKL発現上昇に起因するものではないことが判明した。平成20年度において、1, 25D_3は脾臓におけるIL-34の誘導を介して骨におけるM-CSF非依存的破骨細胞形成を促進することを見出した。すなわちM-CSF欠損マウスに脾摘を施すと1, 25D_3による破骨細胞形成が完全に阻害された(2009年度日本骨代謝学会および米国骨代謝学会にて発表予定)。現在開発中のTgマウスを用いて、破骨細胞ニッチへの脾臓のIL-34の関与についてさらに詳細に解析する予定である。
|