拡散強調MRイメージングは非侵襲的に組織内の自由水プロトンのブラウン運動をイメージングする手法であり、得られるみかけの拡散係数(ADC値)は水分子の動き易さにより決定される。病変間のADCの違いは、組織レベルでは、病変内部の細胞密度、細胞外マトリックスの割合、粘稠度、出血、腫瘍細胞周囲の血管(微小循環)、necrosis、結合組織の存在などが関与するといわれている。7方、細胞レベルでは、核と細胞質の割合、細胞性浮腫との関係、あるいは温度などによりADC値は影響を受けると考えられているが、今だにその十分な証拠を得るまでには至っていない。 そこで今回の研究では、個別の要因をin vitro環境に設置し、どのような因子がADC値に影響を与えるのかを検討した。 検討の結果、因子としては、(1) cell density ; 遠心速度を変化させ、異なる細胞密度を実現、(2) cell size ; 大きさの異なる細胞(CV-1、HeLaS3、HL-60)、(3) 核細胞質比、(4) intracellular contents ; 緩衝液や脂質の細胞内への取り込み、(5) cell apoptosis ; 薬剤(camptothecine、staurosporine)による細胞死、(6) cell necrosis ; 放射線による細胞死、(7) 粘稠度、(8) 温度変化がADCを決定している重要な要因だと結論づけた。現在、得られた結果をもとに論文執筆中である。
|