研究概要 |
核内蛋白の動向からみた口腔顎顔面領域の悪性腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導経路についてさらに検討を重ねてきている。 CDDP,MMC,DXRといった頭頸部領域で用いられる各種抗癌剤やUV照射により悪性腫瘍細胞にアポトーシスを誘導した。 アポトーシスの誘導に伴い正常細胞では核小体相当部位で強力にドット状に反応するAgNORsは分解され,その局在を変えた結果,核小体相当部位での強力な反応は消失した。さらにはNORs構成蛋白の一つであるニュークレオリンは免疫蛍光抗体染色によりAgNORsと同様な変化を示した。ニュークレオフオスミンについても同様の細胞内局在の変化を示した。鍍銀染色を用いたウエスタンブロッテイング変法,抗ニュークレオリン抗体を用いたウエスタンブロッティングでは110kDaの蛋白がアポトーシス誘導に伴い95kDaと80kDaの蛋白に分解された。ウエスタンブロッティング変法と抗ニュークレオリン抗体を用いたウエスタンブロッティングにおける分解が完全に一致することとなった.またニュークレオリンの動向がアポドーシスの指標となりうるものであり,悪性腫瘍の予後判定への適用につながるという面においても非常に意義のある結果となっている。ニュークレオリンの変化が遺伝子レベルで調節されているかどうかを調べる為,半定量PCR法によって調べたが,アポトーシス誘導に伴い,明らかなmRNAレベルの変化は認められなかった。この変化は翻訳後レベルで行われていると考えられる。現在,RNAiを用いた実験系を構築中であり,各種細胞における至適トランスフエクション条件が判明してきている。ニュークレオリンとの関連蛋白を中心に,核内蛋白のアポトーシス実行機構との関わりについてさらに検討中である。さらに癌幹細胞の概念との関わりから配布の始まったIPS細胞を視野に入れた実験系を構築している。
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