骨肉腫は骨原発悪性腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍であり、その治療には広範切除と術前・術後の化学療法が行われているが、再発・転移がおこると予後は著しく悪い。従って再発・転移を防ぐ新たな治療法の開発が強く望まれている。ヒト骨肉腫細胞は膜結合型Fas(Fas)を発現しており、免疫療法は骨肉腫の治療法の一つとして検討される価値がある。しかしながら骨肉腫はFasの他に遊離型Fas(sFas)を分泌しているので、Fas Ligand(FasL)-Fas系を介する免疫細胞の攻撃に対して抵抗性を示す。そこで我々は3種類のヒト骨肉腫細胞株(OS)を用いIL-18のOSに対する直接的な影響を検討した。その結果、細胞増殖、mRNAおよびタンパク発現レベルでFasの発現には全く影響をおよぼさず、sFasの分泌においても対照群に比して変化はみられなかった。次に4種類のOSを用いhistone deacetylase inhibitorであるsodium valproate(N-VPA)がOSのFasL抵抗性に及ぼす影響を検索した。N-VPAは全てのOSに対して濃度依存的に細胞増殖を優位に抑制したが、Fasの発現にはほとんど影響を及ぼさなかった。しかし、N-VPAはOSによるsFasの分泌を抑制し、N-VPAの前処置はFas抗体(CH-11)によるOSのapoptosisをVPA濃度依存的に増加させ、そのメカニズムはCaspase8と3の活性によって証明された。これらの結果よりN-VPAはsFasの分泌を抑制し、FasLに対する感受性を増加させ、OSの免疫細胞抵抗性を減弱させることがin vitroで示された。
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