4種類のヒト骨肉腫細胞株(OS)を用いIL-18がOSに直接影響を及ぼすか検討したが、細胞増殖mRNAおよびタンパク発現レベルでFasの発現には全く影響をおよぼさず、sFasの分泌においても対照群に比して変化はみられなかった。次に4種類のOSを用いhistone deacetylase inhibitor (HDACI)であるsodium valproate(VPA)がOSのFasL抵抗性に及ぼす影響を検索した。VPAは全てのOSに対して濃度依存的に細胞増殖を有意に抑制し、その抑制機序はG1期およびG2/M期における細胞周期の拘束によるものであった。VPAはOSの細胞膜Fasの発現には影響を及ぼさないか減少傾向を示した。また細胞膜Fas ligand (FasL)の発現においても同様の結果であった。しかしVPAの前処置はFas抗体(CH-11)によるOSのapoptosisをVPA濃度依存的に増加させ、そのメカニズムはCaspase8と3の活性によって証明した。さらにVPAはOSによる分泌型Fas(sFas)の分泌を抑制し、これらはTSAでも同様の結果を得た。以上の結果よりVPAはsFasの分泌を抑制し、FasLに対する感受性を増加させ、OSの免疫細胞抵抗性を減弱させることがin vitroで示された。またこれらはVPAのみならず、TSAでも同様の結果を得たことから、HDACIの効果の一つであることが示唆される。VPAはすでに抗てんかん薬として現在広く臨床応用されており、安全性・至適濃度はすでに確認されている。今回使用した濃度はその範囲内であることから、人体への影響が少なく、OSの治療に応用可能であることが示唆された。
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