研究概要 |
本研究では, 酸化チタン粉末にレーザ照射したときに生じる現象を実験的に調べ, レーザ照射によって生じる物理現象が歯質表面の殺菌に主体的に寄与する因子を考察すると共に, 侵襲処置における各条件を考慮しながら酸化チタン粉末による罹患歯質表面の殺菌メカニズムを実験的に解明することを目的とした. そこでまず歯質表面にレーザ照射したときの様子を高速度ビデオカメラで撮影し, レーザ照射時に歯質表面で衝撃波が生じていることを明らかとすると共に, 窩洞形成時の飛散物が歯質表面に対して鉛直方向に吹き飛ぶことを見出した. また, 一次元弾性応力波理論に基づく衝撃応力測定方法を提案し, 長棒材にひずみゲージを貼付した衝撃応力測定装置を製作した. そして, レーザ光の照射条件とレーザ照射に起因して生じる衝撃応力との関係や, 吸収剤の違いによる衝撃応力を比較した. その結果, 提案した手法はレーザ照射時に歯質表面で生じる衝撃応力を十分測定できることがわかった. また, レーザ条件や吸収剤の種類と衝撃応力との関係を導くと共に, 衝撃応力が歯質表面に形成された窩洞体積と相関があることを示した. そして, 歯質を単位体積除去するときに生じた衝撃応力を求めた. さらに, Er : YAGレーザを歯質表面に照射したときの歯質表面温度について, 開発した赤外線輻射温度計を用いて測定を行い, レーザ照射条件と歯質表面の最高温度との関係を調べた. そして, Er : YAGレーザ照射時の温度がNd : YAGレーザ照射時のそれと比較して著しく低いことを明らかとした. 加えて, 酸化チタン粉末と細菌を含有させた乳液中にレーザ照射を行い, レーザ照射の有無による細菌数の減少を調べた. その結果, 酸化チタン乳液と細菌を懸濁させた液中にレーザ照射を行うと, 菌数が著明に減少した. その効果は, レーザ照射に起因した熱作用に加えて, 衝撃応力に起因した物理的な細胞壁の破壊である可能性を示唆した.
|