研究概要 |
象牙質・歯髄複合体再生療法を確立することを目的として、前年度に我々は、象牙芽細胞様の特徴を有するラット歯髄由来細胞株KN-3を樹立し、報告した(J. Endod. 37, 1187-91, 2007)、また、断髄後に血管を誘導して、その後に歯髄組織と象牙質様硬組織を再生させるための方法として、ゼラチンハイドロゲル粒子と線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)を用いたドラジグデリバリーシステムを構築した。そしてこれらをスキャホールドであるコラーゲンスポンジとともにラット断髄部に埋入することで、象牙質-歯髄複合体再生の可能性を示した(J. Endod. 371198-1202, 2007)しかしながらこのでは部位の至る所に石灰化硬組織が点在し、理想的な象牙質-歯髄複合体の再生が実現してはいなかった。 本年度は歯髄組織の上層に象牙質様硬組織が構築される、理想的な象牙質-歯髄複合体再生の可能性を探るため、in vivoおよびKN-3細胞を用いたin vitroの実験を行った。実験結果より、FGF-2の濃度をこれまでより低くし最適化することで、断髄部の下層に歯髄組織を、まだ上層部に石灰化組織を構築することが可能となることを確認し、報告した(J. Endod. 2009,in press)。これに加えて、コラーゲンスポンジ以上に象牙質-歯髄複合体再生療法に有用なスキャホールドの候補とじてヒアルロン酸に注目し、その有用性について検索した。その結果、ヒアルロン酸はコラーゲンスポンジと同様に細胞保持能力を有する上に、炎症を惹起しにくいことが示唆された。さらに、象牙質-歯髄複合体の創傷治癒過程として熱刺激を加えた際に起こる炎症応答についても研究し、発表した。 以上、今年度に行った研究により、象牙質-歯髄複合体再生療法の実現に向け有用と考えられる材料及び治療方法についての多くの知見を得ることができた。
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