研究概要 |
本年度では、ビーグル犬上顎前歯部歯髄をコラゲナーゼによって段階的に消化し、イヌ歯髄細胞(Dog Dental Pulp Cells: DDP)を得た。得られたDDPにレトロウイルスベクターを用いてヒトテロメレース触媒サブユニット(hTERT)およびヒトパピローマウイルス(HPV)のE6,E7遺伝子を遺伝子導入して不死化DDPを得た。増殖曲線によってhTERTおよびE6E7遺伝子を導入したDDPは正常細胞の分裂回数を超えて細胞分裂していたので不死化したとみなした。しかしながらhTERT単独では細胞不死化は確認できなかった。得られた不死化DDPは、in vitroにおける石灰化能を以下の方法にて検討した。(1)Total RNAを抽出し、RT-PCR法によって象牙質関連遺伝子の発現の検討、(2)ALPase活性の測定を行った。今回の実験結果から得られたhTERT単独での不死化はできなかったが、E6,E7遺伝子とhTERT遺伝子を組み合わせて遺伝子導入することで不死化DDPが得られた。得られたDDPは正常細胞と比較して寿命が延長していただけではなく、象牙質関連遺伝子群を発現し、in vitroにおいて若干の石灰化能が示唆された。不死化DDPには様々な種類の細胞を含む雑多な細胞群であるため、本来石灰化する細胞が占める割合が少ないために低石灰化に留まったと推測される。今後は細胞のクローニングを行い高石灰化の細胞採取を行う予定である。
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