研究概要 |
本年度では、不死化イヌ歯髄細胞のin vitroでの特性の詳細およびin vivoにおける覆髄実験を行った。昨年度に樹立に成功したヒトテロメレース触媒サブユニット (hTERT) および16型ヒトパピローマウイルス (HPV) のE6, E7遺伝子によって不死化イヌ歯髄細胞を用いて、 (1) TotalRNAを抽出し、RTPCR法によって象牙質関連遺伝子の発現の検討、 (2) アリザリンレッド染色による石灰化能の検討、 (3) ビーグル犬小臼歯部に露髄を行い、細胞移植を試みた。本年度の実験結果からは、 (1) 象牙質関連遺伝子であるオステオポンチン、1型コラーゲン、Runx2の遺伝子発現が認められ、またI型コラーゲン発現はrhBMP- 2添加によって変化が認められなかったものの, オステオポンチンは顕著に発現上昇が認められた。 (2) 通常の培地ではアリザリンレッドに対する染色性も陰性であったが, 石灰化誘導培地で細胞培養を行うと, アリザリンレッド染色性を示し石灰化能を有することが示された。このことからも、今回樹立した不死化イヌ歯髄細胞は石灰化誘導培地に反応性を示す象牙芽細胞前駆体細胞が含まれる可能性が示唆された。また (3) β-gal標識した不死化イヌ歯髄細胞を露髄面に移植を試みたが、2ヵ月後の切片では細胞が消失していた。充分な栄養供給がなされなかったことや分化に必要な細胞外マトリックスを検討する必要がある。今後は移植の条件を整え、in vivoにおいて象牙質分化の条件の検討が必要だと考えられた。
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