研究課題
歯髄炎の治療には一般に抜髄が行われるが、歯髄は歯を維持するための重要な機能を有し、抜髄は結果として歯を失う危険性もある。したがって、私どもは歯髄幹細胞を用いて、抜髄に代わる、新しい歯髄再生治療法を開発している。歯髄の再生には血管の新生が不可欠である。今回私どもは、容易に大量に得られる他の組織からの細胞を歯髄再生に応用するため、血管誘導に優れ、歯髄再生に有効な歯髄由来のCD31- ; CD146-SP細胞を他の組織のものと比較し、歯髄特異性を検討した。本年度は、ブタ歯髄、大動脈、脂肪、骨髄組織より分取、培養したCD31- ; CD146-SP細胞のマイクロアレイ解析を行った。その結果、歯髄由来CD31- ; CD146-SP細胞は他の組織に比べて血管誘導を促進するサイトカインであるG-CSFやGM-CSF、MMP-3、NPY、RAMP 1、STC1、TGFβ-1、TGFβ-3の発現が高かった。またこれらの細胞を下肢虚血マウスに移植して、in vivoにおける血管新生能の比較を行った。ドップラー血流量測定を行うと、歯髄由来CD31- ; CD146-SP細胞を移植したマウスは他の組織に比べて有意に血流の回復が見られた。またBS-1 lectinによる免疫組織学的解析を行うと、歯髄由来CD31- ; CD146-SP細胞を移植したマウスは他の組織由来細胞に比べて有意に血管の新生がみられた。これらの結果より、歯髄由来CD31- ; CD146-SP細胞は他の組織由来の細胞と比べて細胞移植による血管新生さらには歯髄再生に有効な細胞源となる可能性が示唆された。
すべて 2008
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Stem Cells 26
ページ: 2408-2418
日本歯科保存学雑誌 51
ページ: 602-613