研究課題
本研究では、フラーレンやカーホンチユーフ(以下、CNT) などの炭素系ナノ微粒子(ナノカーボン)の生体適合性の検討を行う為に、1) ナノカーボンの親水化処理、2) その体内動態の可視化をみた。コハク酸過酸化との反応によりCNT表面に多数のカルボン酸を提示させることに成功し、生体への投与の為の目標としていた、数百ppmの濃度での分散に成功した。また、アミン化合物との反応により粒径と形状を制御したフラーレンパーティクルを作成し、更なる化学修飾によりその親水化にも成した。得られたナノカーボン誘導体の(500-900ppm) をマウス尾静脈より投与し、その後の経時観察を行った。投与後のマウスは、数週間の経過観察(最大4週間)中に、状態観察・体重推移などから対照との顕著な差異は見られなかった。投与後一日および一週間のマウスから肺・肝臓を摘出し、透過型電子顕微鏡を用い観察したところ、各臓器へのCNT誘導体の到達・滞留が確認され、投与物質が血流に乘り各臓器へと到達している事が示唆された。次に、CNT表面に提示した官能基(カルボキシル基) を利用して、可視化の為に様々な化学種の修飾反応を試みた。この第二段階の化学修飾は親水性フラーレンの化学修飾にも応用可能である。また、体内動態可視化法の基礎検討として、無機粒子などの体内動態をMRI,ICP-AES,蛍光X線顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いて観測に成功した。更にCNTなどナノカーボンの体内動態可視化のための分子設計のため、磁性物質(マンガンイオン(Mn^<2+>)とグラフェンシートとの相互作用の違いよる電子状態の変化を分子軌道計算により評価し、結合状態の違いがMR信号に及ぼす影響を理論的に予測した。その結果、結合サイトの違いにより、超微細結合定数が10-100mTまで大きく変化した。この結果はMn^<2+>を指標とする事によりナノカーボン中での結合の変化の捕捉が可能である事を示唆している。
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