研究概要 |
これまでに, 申請者はパウダージェットデポジション(PJD)法を応用して歯質上に歯の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)膜の生成し, 歯質-生体材料間に全く新しいインターフェイスを創成することに成功している. HA膜は緊密で幅広い面積であり, エナメル質と同程度の硬さであり, 歯科診療で一般的に使用されているコンポジットレジンと同程度の歯質への接着強度を有している. これまで、試料の基板として平坦面を形成し研磨したエナメル質を使用していたが、今年度, 本研究では, PJD装置, HA微粒子, 噴射条件等を検討してきた結果, ヒト抜去歯のそのままの表面へのHA膜の成膜に成功した. これは, 平滑面のみならず, 小窩裂溝内への成膜も確認がされている. つまり, PJD法を臨床応用するための成膜方法は, 確立されつつあるといえる. 特にPJD装置では, 実験用装置ではなく, ハンドピース型装置での成膜が可能になっており, 実際の治療に準じたハンドピース先端の噴射ノズルの速度, 角度等の条件を自由に設定することにより, より良い成膜条件の検討を可能とした. また, 様々な粒子半径, 焼成温度のHA微粒子を使用し, 成膜に適した条件(粒子半径3-4μm, 焼成温度1200℃)を明らかにした. 今後は, 実際の口腔内のHA膜特性の変化を解明するために, 人工唾液や擬似体液内にHA膜を浸漬し, 機械的, 構造的変化を経時的に行うとともに, 口腔内で成膜すべき, HA膜の所要条件, 成膜条件を検討する.
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