歯科治療は患者にとって必ずしも容易に受け入れられるものではなく、負担を強いられるものである。また、歯科治療の患者への負担の大きさは予後にまで影響を与えることは誰もが認めることであるが、客観的なデータは示されていない。QOLの向上、患者主体の治療を行うためにも、術者が治療時の患者の心理的ストレスを連続的に把握することは、超高齢化社会を迎えるにあたり、歯科医療の質の向上、安全体制の確保のために欠かせないものである。しかし、心理的ストレスをモニタリングしている報告では、歯科治療時に簡便に測定が可能なものは国内外においてほとんど見当たらない。そこで本研究は歯科治療時の患者の心理的ストレスをモニタリングするシステムを開発することを目的とした。近年のME機器の発達は目覚しく、小型化、高性能化により、プローブを体表皮膚に絆創膏で固定するだけで計測が可能なものである。本研究で使用する深部体温計は、わが国において臨床応用が開発されたものであり、国内外においても歯科の分野では特に新規性が高く、今後世界に発信していけるものと考えられる。本研究ではコントロールされた条件下で心理的ストレスにより生じる手掌深部体温の変化を詳細に解明する。得られる知見は高齢者や有病者に対する補綴処置選択の妥当性を心理的ストレスを加味して判断するために重要な参考資料となる。初年度の目的として歯科診療時の心理的ストレスの測定方法として、健常者にて測定方法の妥当性の評価を行い、心理的ストレスが深部体温に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。深部体温計(TERUMO社・コアテンプCM210)を用い手掌深部体温の変化をモニタリングしながらノートPCヘデータを取り込むことに成功した。現在、データの解析、および測定する条件を規定しているところである。
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