研究概要 |
歯科診療時の心理的ストレスの測定方法として,唾液中のストレスマーカーを測定する方法,心拍変動や血圧変動を算出する方法,脳波を測定する方法など数多くの報告があるが,歯科臨床に適し,かつ連続的なモニタリングをしている研究は数少ない.本研究では、患者の深部体温を測定し心理的ストレスとの関連を系統的に検証することを目的とした。しかし、現在の深部体温計では測定を開始できるまでの20分要するため、臨床応用するには、まだ現実的ではない。そこで、緊張など覚醒レベルの上昇により手掌や手指で見られる精神性発汗は交感神経の緊張状態を評価するのに非常に適した指標であることに注目した。中でも、精神性発汗部位である手掌、手指に装着した一対の電極間の電位差(皮膚電位)を測定する方法は、臨床的に利便性が高く、嘘発見器に代表されるように古くから実用化されてきた。しかし、歯科治療時に測定された報告があるにも関わらず、モニタリング装置としての報告がなく、さらに臨床的有用性も明らかにされていない。皮膚電位は、覚醒水準や入眠過程において緩やかに変動するSPLと緊張や情動興奮と比較的よく対応して出現するSPRに区分される。平成20年度において、本学歯学部附属病院義歯外来に来院し研究に同意を得られた患者20名を被験者とし、歯科診療時における皮膚電位の測定を行った。本研究で、皮膚電位のSRP頻度は心理的ストレスのモニタリングに適するパラメータであることが示唆された。今後の課題として心理的ストレスを定量化できるかを検証することがあげられる。
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