本研究は、術者が歯科治療時の患者の心理的ストレスを連続的に把握する装置の開発を目的としている。歯科治療時の患者への負担の大きさは予後にまで影響を与えることは誰もが認めることであるが、客観的なデータとして示されていない。QOLの向上、患者主体の治療を行うためにも、術者が加療時の患者の心理的ストレスを連続的に把握することは、超高齢社会を迎えるにあたり、歯科医療の質の向上、安全体制の確保のために欠かせないものである。そこで、昨年度のデータを踏まえ、歯科治療時の心理的ストレスが皮層電位に及ぼす影響を検証した。特に、皮膚電位のSRP頻度はモニタリングに適するパラメータであることが示唆された。開発された装置は心理的ストレス評価のためのモニタリング装置として、簡便であり臨床的有用性が高いことが明らかとなった。 今後の課題として、具体的な診療ステップでの皮膚電位の変化を測定し定量化すること。及び、患者の主観的な苦痛と、心理的ストレスとの関連性、主観的な苦痛と、無意識下での心理的ストレスとの関連性を検証することがあげられる。また、開発された装置はモニタリング装置としての利便性の高さから、歯科のみならず、あらゆる心理的ストレス測定に応用可能なものであると考えられ、今後の研究をさらに発展させるものとなった。
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