研究概要 |
本研究の目的は, これまでに開発したインプラント手術や顎切り手術支援などを発展させオブジェクト間の力覚を感知できるようにすることで, インプラント上部構造製作や咬合調整のためのバーチャル咬合器システムの製作を行うことであった. 手術シミュレーションをもとに作製する上部構造の適合精度は, 手術支援システムによるインプラント埋入精度に大きく左右される. そこで, まず始めにインプラント埋入精度の向上を目指し, 従来の手術支援システムの改善を行った. これにより, シミュレーションに対するインプラント埋入精度は約100ミクロン-200ミクロンとなった. 次に, 既に開発を行っていたオブジェクト間触力覚感知ソフトウェアの実用化に向けて, より演算および描画処理の早いボードや大メモリーのコンピュータの導入で処理容量と速度の増加を図り, 歯のデータの精密さを向上させた. また, 力覚の調整により現実的な力覚が感じられるように改善を行ったが, 自動的に早期接触部位等を削合する機能は引き続き開発中であり, 今後の課題となっている. さらに, 顎変形症または歯列矯正患者の手術の際に用いるバイトスプリントを, 術前の3次元骨像上でのシミュレーションによりCAD/CAM作製し, いくつかの症例において臨床応用を行った. このバイトスプリントにより, 手術時間の短縮および適正な位置への顎骨の固定を行うことが可能となり, 患者・術者両方の負担を軽減する有効な方法となった.
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