1.舌腫瘍患者における舌圧測定 まず、舌腫瘍と診断された患者4名に対し、舌部分切除術の術前と術後において測定を行った。各患者の使用している上顎義歯もしくは直接口蓋粘膜に、義歯用安定剤を用いてセンサーシートを貼付して測定を行った。測定項目は、水嚥下(15cc)、空嚥下ならびに口蓋への最大押し付けとした。測定の結果、舌主要患者の舌圧は、術前・術後ともに健常高齢者と比べて低下していた。このことは、舌腫瘍の存在および術後の綴痕収縮などが舌機能の低下をもたらしたためと思われる。また、前腕皮弁による再建が行われた症例では、術前術後において舌圧の大きさにほとんど違いが見られず、同時に行った30ccの水のみテストでも嚥下機能に低下は見られなかった。一方、再建が行われなかった症例では、手術前と比較して手術後には切除部位に対応した舌圧の減少が観察され、補綴装置製作などリハビリテーションの必要性が示唆された。 2.舌圧センサーシートを用いた舌接触補助床の製作 中咽頭腫瘍により右切除術を受けた患者に対し、嚥下時舌圧を測定した。その結果、コントロール群として測定した健常高齢者13名の平均舌圧よりも有意に低い舌圧が認められた。さらに、舌圧の特に低かった部分(前方郡および左側後方部)を厚くした舌接触補助床を、舌圧を観察しながら製作した。その結果、健常高齢者の嚥下時舌圧の平均よりも舌圧は小さかったものの、口蓋の各部位での圧勾配の正常化、左右差が解消され、舌接触補助床を用いることにより舌圧発現様相が改善されることが明らかとなった
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