研究概要 |
「人間にとって食事すること, 咬むことはとのような意味をもつのだろうか? 」これを明らかにするためには, 咀嚼が脳および全身に与える影響を包括的に解明することが必要である. 本研究は歯学と神経科学が融合した新領域であり, 「食べる」という行為が生体に何をもたらすのか, またその特殊性は何に由来するのかを明らかにすることを最終目標としている. 我々は, 咀嚼をはじめとする顎口腔機能運動時の脳循環, 体循環ならびに筋活動量の同時計測を行い, これらの経時的変化について分析を行った. その結果, 咀嚼やクレンチングにより脳循環と体循環は亢進するが筋活動の種類や量に影響されること, 運動側を片側に限定しても脳循環は両側性に亢進すること, またその亢進の程度は咀嚼側, 咀嚼リズムの意識的制御の有無に影響されないことを明らかにした. さらに実験系を発展させ, 体循環を制御する自律神経活動を計測項目に加え, 咀嚼時の循環応答の数理モデル化を目指した. その結果咀嚼時の脳循環は, 心血管系や体循環を制御する自律神経活動の変化より, 局所脳血流量の影響を受け変化する特徴を有していることが示された.
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