本研究では、顎関節雑音症例の診断に有用な顎運動パラメータの抽出、考案を目的として、今年度では当初80名の被験者の顎運動測定を予定していた。しかしその準備段階で、倫理審査委員会での研究の承認を得たり、被験者謝金支給に伴う事務手続きの整備を完了するのに当初の予定を上回る時間を要した。さらに使用予定の機器の予期せぬ故障による修理期間を要したこともあり、今年度に顎運動測定を実施できた被験者は4名にとどまった。 しかしすでに研究実施環境の整備が完了し、現在は随時被験者を募集してデータ収集を開始しているため、来年度には計画通りの研究の進行が見込まれる。 本研究での顎運動データ収集が遅延した一方で、先に測定済みの80名分の顎運動データを元にクリッキング患者に特徴的な6自由度顎運動パラメータの抽出を試みた。これまでの研究で解析に用いていた36種類の顎運動パラメータに新たに考案したガイドに関するパラメータを6種類加えた合計42種類のパラメータについて検討を行ったところ、顎運動の協調性に関するパラメータにおいて顎関節雑音(クリッキング)症例に特徴的と考えられるパラメータが数種類認められた。これらのパラメータについては今後被験者数を増やしてさらに検討する必要がある。 なお今年度の学会発表については、"強い噛みしめによりクリッキングを生じる1例"という演題で第20回日本顎関節学会総会・学術大会で発表を行ったほか、第116回日本補綴歯科学会学術大会で共同演者として参加するとともに研究調査を行った。また東京医科歯科大学顎関節治療部を訪問し、調査、研究打合せを行った。
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