本研究では、顎関節雑音症例の診断に有用な顎運動パラメータの抽出、考案を目的とし、健常者および顎関節雑音を有する被験者について顎運動測定を実施し、データ解析を行った。 まず、顎口腔系に異常を認めない健常有歯顎者24名(27.7±8.6歳)について顎運動データ解析を行い、パラメータの抽出を試みた。ガム咀嚼中の顎運動データについて、運動論的顆頭点を下顎頭の解析点とし、咬頭嵌合位の顆頭間軸を基準顎位として、開閉口相で咀嚼側下顎頭が咬頭嵌合位から0.5mm離れた顎位における顆頭間軸とのなす角度(以下、顆頭間軸角)を求め、咀嚼開始15秒後からの咀嚼運動の5サイクルにおける顆頭間軸角の平均値を各被験者の代表値として選択し、統計解析を行った。開口相、閉口相ともに顆頭間軸角に左右の咀嚼側での差は認められなかったが、開口相と閉口相での顆頭間軸角の比較では有意差を認めた。閉口相における顆頭間軸角は大きい値を示すものから小さい値を示すものまで被験者間でバラツキが大きかったが、開口相の顆頭間軸角は全体に小さい値を示し、バラツキも小さかった。次に、顎関節雑音を有する被験者12名(25.0±2.7歳)について同様に顆頭間軸角を求め、健常被験者との比較を行った。顎関節雑音症例の内訳は、両側クリック6名、開口時片側クリック3名、閉口時片側クリック3名であった。それぞれの群と健常被験者群との間に有意差は認められなかったが、両側クリック群における開口時と閉口時の顆頭間軸角はいずれも値にかなりバラツキがあり、健常被験者群のように閉口時に全体に小さい値となることはなかった。現在解析中の被験者データもあるため、被験者数を増やすことで、顆頭間軸角のパラメータとしての有用性が示されると考えている。 なお第22回日本顎関節学会学術大会や第118回日本補綴歯科学会学術大会などで共同演者として発表を行うとともに研究調査を行った。
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