研究概要 |
本研究の目的は,積層構造を有するFRCクラスプがコーティング層のクラック等のトラブルを起こさずに,適正な維持力を発揮するために必要なアンダーカット量を境界条件非線形解析を用いて定量的に評価し求めることである.本年度は,維持力とアンダーカット量との関係を定量的に評価できる解析方法を確立することが主目的であった.のちに実際の現象と有限要素法による解析結果との妥当性の検証が行えるように,まず繰り返し着脱試験に用いた支台歯とクラスプアームの形態を忠実に再現した形状を作成した.クラスプについてはFRCの特徴である異方性を考慮した.支台歯底部を拘束し,クラスプ基部の節点群に強制変位を与え,摩擦力(摩擦係数0.2)を考慮した境界条件非線形解析(接触解析)を行った.臨床的に維持力に相当する荷重を強制変位を与えた節点群の節点反力の総和として算出したところ5N〜7Nの値を得た.これは繰り返し着脱試験で得た維持力と遜色ない値であり,今回作成したモデルで維持力とアンダーカット量との関係を定量的に評価することが可能であることが確認できた.ただし,接触と摩擦の定義および履歴定義に関する多くのパラメータ(接触判定許容値,バイアス,摩擦のタイプ,静止摩擦係数,動摩擦係数,荷重ステップ幅,マトリクスソルバーの種類など)を変更しての試行により,さらに定量的精度を高められる可能性があり,これらのパラメータの設定については引き続き検討する予定である.
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