研究概要 |
本研究の目的は, 積層構造を有するFRCクラスプがコーティング層のクラック等のトラブルを起こさずに, 適正な維持力を発揮するために必要なアンダーカット量を境界条件非線形解析を用いて定量的に評価し求めることである. 本年度は, 1)維持力とアンダーカット量との関係を定量的に評価できる解析方法の確立と2)FRC部とコーティング層から成る積層構造のモデル化が目的であった. 1)については, 実際の現象と有限要素法による解析結果との妥当性の検証が行えるように, まず繰り返し着脱試験に用いた支台歯とクラスプアームの形態を忠実に再現した形状(基本形)を作成した. クラスプについてはFRCの特徴である異方性を考慮した. 支台歯底部を拘束し, クラスプ基部の節点群に強制変位を与え, 摩擦力(動摩擦係数0.31)を考慮した境界条件非線形解析(接触解析)を行った本解析で得られたFRC単体のクラスプの維持力は6.36Nであり, 繰り返し着脱試験の実測値である6.34Nとよく一致した.基本形のFRCクラスプの維持力の解析値と実測値がよく一致したため, 本解析方法により種々の条件を変更したクラスプ形状についても実測せずとも維持力の予測が十分可能となった. 2)についてはFRC部をソリッド要素で表現したのに対し, FRC部の外表面を被覆するコーティング層をシェル要素で表現することにより, 両者から成る積層構造のモデル化を試みた. FRC部とコーティング層との界面の接着は完全であるという条件の下, 1)と同様の解析を行ったところ, コーティング層の厚さによってはFRC部に対する補強効果を思わせる維持力の増加が確認された.
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